## プラトンのメノンの原点
メノン対話篇の執筆年代と背景
メノン対話篇の正確な執筆年代は不明ですが、一般的にはプラトンの初期対話篇の一つとされ、ソクラテスの死の直前、紀元前399年頃から紀元前390年頃に書かれたと推測されています。
この時代は、アテネがペロポネソス戦争でスパルタに敗北し、民主政が崩壊した後、三十人政権と呼ばれる寡頭政が敷かれていた時期です。ソクラテスは三十人政権の圧政を批判し、そのために命を落としました。
メノン対話篇は、こうした政治的混乱と、伝統的な価値観が揺らぎ始めていた時代背景を反映していると考えられています。
登場人物と設定
メノン対話篇の主な登場人物は、ソクラテスと、テッサリアの貴族の青年メノン、そしてメノンの従者です。
メノンは、政治家としての成功を夢見ており、そのためには徳が必要だと考えています。彼は、徳は教えられるものなのか、それとも生まれつきのものなのか、あるいは、その他のものなのかを知りたがっています。
対話は、メノンの邸宅で行われます。
主なテーマ
メノン対話篇では、主に以下のテーマが扱われています。
* **徳の本質**: 徳とは何か、どのようにして徳は獲得されるのか?
* **知識と想起**: 我々はどのようにして知識を得るのか? 真の知識は生まれながらにして魂に備わっているものなのか?
* **教育の役割**: 教育は人間をより良くすることができるのか?
メノン対話篇では、これらの問いに対する明確な答えは提示されません。ソクラテスは、問答を通して、メノンの無知を暴き、彼自身に考えさせることを試みます。
影響
メノン対話篇は、プラトンの他の対話篇と同様、西洋哲学に大きな影響を与えました。特に、徳と知識に関する議論は、その後の倫理学や認識論の発展に大きく貢献しました。
また、メノン対話篇で展開される「想起説」は、プラトンのイデア論と深く結びついており、西洋思想における重要な概念の一つとなっています。