## プラトンのパイドンの選択
パイドンにおける選択
プラトンの対話篇『パイドン』は、ソクラテスの最後の時を描いた作品として知られています。この作品では、魂の不死や死後の世界といったテーマが、ソクラテスと彼の弟子たちの対話を通じて展開されます。そして、これらのテーマと密接に関係するのが、「選択」という概念です。
哲学者の選択としての死
『パイドン』において、ソクラテスは死を「魂が肉体から解放されること」として捉え、むしろ歓迎すべきものとして語ります。彼にとって、肉体は魂を真の知へと導くための障害であり、死によって初めて魂は純粋な状態へと回帰できるからです。
ソクラテスは、真の哲学者は常に死を想い、魂の鍛錬に励むべきだと説きます。肉体的な快楽や世俗的な名誉に囚われず、理性によって真理を追求することにこそ、人間の価値があると考えたのです。
生の選択
一方で、『パイドン』では、生の選択についても言及されています。ソクラテスは、弟子たちに逃亡を勧めるクリトンの申し出を断り、アテネの法律に従って毒杯を仰ぎます。
彼は、たとえ不当な裁判であっても、法に従うことが市民としての義務だと考えました。逃亡は、自らの信念を裏切り、アテネの秩序を乱す行為だと考えたのです。
選択の根底にあるもの
ソクラテスの死と生の選択は、どちらも彼の哲学に基づいたものでした。彼は、目先の利益や感情に左右されることなく、理性的な思考によって最善の行動を選択しようとします。
『パイドン』におけるソクラテスの選択は、私たちに「善く生きるとは何か」「人間にとって真の幸福とは何か」という普遍的な問いを投げかけています。