## プラトンのティマイオスの思索
ティマイオスにおける宇宙論
ティマイオスは、プラトンの後期対話篇の一つであり、宇宙の創造、自然世界の構造、人間の魂の起源など、広範なテーマを扱っています。対話篇の主要な語り手であるティマイオスは、宇宙が知性を持つ創造主であるデミウルゴスによって、永遠で不変のイデアを模倣して創造されたと説明します。
デミウルゴスとイデア
ティマイオスによれば、デミウルゴスは善を望み、無秩序な物質から最善の可能な世界を創造しようとしました。その際、デミウルゴスは、感覚的な世界を超越した、永遠で不変の原型であるイデアをモデルとして用いました。イデアは、現実世界のあらゆるものの真の姿であり、完全な形而上的な存在です。
宇宙の構成要素
ティマイオスは、宇宙が火、空気、水、土という四つの元素から構成されていると述べています。これらの元素は、デミウルゴスによって、幾何学的な形を持つ最小単位である正四面体、正八面体、正二十面体、正六面体によって構成されています。それぞれの元素は固有の性質を持ち、それらの組み合わせによって、多様な物質世界が形成されます。
魂と肉体
人間の魂は、デミウルゴスによって、宇宙の魂と同じ材料から創造されました。魂は、理性、気概、欲望の三つの部分から構成され、それぞれが異なる機能を果たします。理性は、イデアを認識し、真の知識を求める部分です。気概は、理性に従い、欲望を抑える役割を担います。欲望は、身体的な快楽や物質的な満足を求める部分です。
宇宙における人間の位置
ティマイオスは、人間が宇宙の中心に位置づけられているわけではなく、むしろ、宇宙の秩序と調和の一部として存在していると説きます。人間は、理性を通してイデアを認識することで、宇宙の創造主であるデミウルゴスの善の意志を理解し、それに従うことが求められます。
ティマイオスの影響
ティマイオスは、古代ギリシャにおける自然哲学、宇宙論、形而上学に多大な影響を与えました。特に、宇宙の創造主としてのデミウルゴスの概念や、イデアをモデルとした宇宙創造論は、後の哲学や神学に大きな影響を与え続けました。また、ティマイオスは、西洋思想における理性と感覚、魂と肉体、精神と物質といった二元論的な思考の源流の一つとしても重要な位置を占めています。