## プラトンのソクラテスの弁明と時間
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時間と裁判
「ソクラテスの弁明」において、時間は非常に限られたものとして描かれています。冒頭、ソクラテスは、自分に対する告発者たちがあまりにも長い時間を費やして嘘をついてきたため、彼らに反論する時間が限られていると述べています。
> “ただいま申しましたように、これらの人々が長い間、しかも機会のあるごとに、まだ幼いあなたがたを相手に、いろいろなことを私のことを悪く言ってまわってまいりましたので、私はまずその点から弁明しなければなりません。しかも、まったく事実無根のことを言ってまいりました。” (17a)
さらに、法廷での弁論には時間制限があることが繰り返し言及されます。ソクラテスは、持ち時間が限られているため、簡潔に話さなければならないと述べています。
> “ですから、どうか、私が日ごろ街中で、市場で、あなたがたのうちのだれかに会ったときのように、気楽な調子で話すのを大目に見てやってください。皆さん、今ここで起こっていることは、まったく思いもよらないことなのです。ほんの少し前に呼び出されて、もう弁明を始めなければならないとは。” (17b-c)
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時間と死
ソクラテスは、死を恐れるのではなく、むしろ悪を恐れるべきだと主張します。彼は、死が永遠の眠りであろうと、別の世界への旅立ちであろうと、どちらにしても恐れるべきものではないと述べています。
> “死が、感覚のない状態であるということ、つまり、深い眠りについて、夢も見ないような状態と同じであるとすれば、死はまことにすばらしいもののように思われます。” (40c)
このように、ソクラテスは死に対して時間的な観点から考察しています。彼は、死後の状態がどのようなものであろうとも、それは無限の時間軸における一瞬に過ぎないと考えています。
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時間と哲学
ソクラテスは、自分の人生を哲学に捧げてきたことを誇りに思っています。彼は、アテネの人々に、吟味されずに受け入れられた人生は生きるに値しないと説いてきました。
> “吟味されない人生は、生きるに値しない。” (38a)
ソクラテスにとって、哲学とは単なる知的活動ではなく、人生を賭ける価値のあるものでした。彼は、たとえ死が待っていようと、自分の信念を曲げることはしませんでした。
「ソクラテスの弁明」における時間というテーマは、ソクラテスの哲学の中心的な要素です。彼は、限られた時間の中で、いかに生きるべきかを真剣に考えていました。ソクラテスの言葉は、現代社会を生きる私たちにとっても、重要な教訓を与えてくれます。