プラトンのゴルギアスの思索
弁論術の真価とは何か?
プラトンの対話篇『ゴルギアス』は、紀元前4世紀頃に書かれた作品であり、ソクラテスと、ソフィストと呼ばれる当時の職業弁論家たちとの対話を描いています。中心人物であるゴルギアスは、ソフィストの中でも特に有名で、弁論術の達人として知られていました。
対話の中でソクラテスは、ゴルギアスや他のソフィストたちの主張を巧みな論理と皮肉を交えながら次々と反駁していきます。ソフィストたちが説く弁論術とは、相手を説得し、自らの利益を得るための単なるテクニックに過ぎないとソクラテスは批判します。真の弁論術とは、真実を追求し、魂の善を目的とするものでなければならないとソクラテスは主張するのです。
不正は罰せられるべきか?
『ゴルギアス』の重要なテーマの一つに、「不正は罰せられるべきか?」という問題があります。ソクラテスは、不正を犯すことよりも、不正を犯して罰せられないことの方が不幸であると主張します。なぜなら、罰を受けることによって魂は浄化され、真の善へと向かうことができるからです。
一方、ソフィストたちは、不正を犯してでも権力や富を得ることが、人生の成功であると考えます。彼らにとって、罰を受けることは不利益でしかなく、可能な限り避けるべきものでした。
魂の善とは何か?
ソクラテスは、真の幸福は、魂の善によってのみもたらされると考えます。では、魂の善とは何でしょうか?それは、正義、節制、勇気といった徳を身につけることです。ソクラテスは、これらの徳こそが、魂を真に善くし、幸福へと導くと信じていました。
『ゴルギアス』は、単なる弁論術の是非を問う作品ではありません。それは、人間にとっての真の幸福とは何か、正義とは何か、といった根源的な問題を提起する、哲学的に極めて重要な作品です。