プラトンのゴルギアスの原点
対話篇の執筆年代とソクラテスの死
ゴルギアスの執筆年代は正確にはわかっていませんが、一般的にはプラトンの初期から中期にかけての作品と考えられています。様式的・内容的な分析から、メノンやプロタゴラスといった対話篇と近い時期に書かれたと推測されています。これらの対話篇は、ソクラテスの裁判(紀元前399年)以前の出来事を描いていると一般的に考えられています。
ゴルギアスという人物と当時の弁論術
対話篇のタイトルにもなっているゴルギアスは、紀元前5世紀に活躍した実在の弁論家でした。彼は、シチリア島レオンティノイ出身で、巧みな話術で知られていました。ゴルギアスをはじめとする当時の弁論家は、金銭と引き換えに雄弁術を教え、裁判や政治の場で影響力を持つことを目指していました。
プラトンの弁論術に対する批判
ゴルギアスでは、ソクラテスとゴルギアス、そしてその弟子であるポロスやカリクレスといった人物たちが、弁論術の真の価値や、正義、善といった哲学的なテーマについて議論を交わします。プラトンは、ソクラテスを通して、当時の弁論術が真実を追求するのではなく、聴衆を説得することのみを目的とした、一種の技巧に過ぎないと批判しています。
対話篇におけるソクラテスの哲学
プラトンは、ソクラテスの口を通して、真の幸福は、魂の善に基づくと主張します。そのためには、自己の内面を見つめ、無知を自覚し、真の知識を追求することが重要であると説いています。ゴルギアスでは、このソクラテスの哲学が、当時の弁論術の価値観と対比されながら、鮮明に描かれています。