## プラトンのゴルギアスの光と影
光:真の弁論術と魂の救済
「ゴルギアス」においてプラトンは、ソクラテスの口を通して、当時のアテネ社会に蔓延していた不正と偽善を鋭く批判しています。特に、雄弁術を駆使して衆愚を操り、権力と快楽を追い求める当時の政治家や弁論家たちを、ソクラテスは痛烈な論理で追及していきます。
ソクラテスは、真の弁論術とは、単に聴衆を説得して自分の思い通りに操る技術ではなく、真実を明らかにし、魂の善を追求するための技術であると主張します。彼は、不正を犯して一時的に快楽を得たとしても、魂に傷跡を残し、真の幸福を得ることはできないと説きます。
影:相対主義とニヒリズムの影
「ゴルギアス」は、ソクラテスの理想主義的な主張が展開される一方で、相対主義やニヒリズムといった暗い影も見え隠れします。ソクラテスの論敵であるカリクレスは、弱肉強食の自然の法則こそが正義であり、力によって欲望を満たすことが人間の幸福であると主張します。
カリクレスの主張は、ソクラテスの倫理観と真っ向から対立し、当時のアテネ社会に存在した倫理的相対主義を象徴しています。また、対話篇全体を通して、善悪の基準や魂の不死など、確固たる結論が出ないまま終わってしまうことも、読者に一種の不安感と虚無感を抱かせる要因となっています。