## プラトンのクリトンの秘密
クリトンの訪問とソクラテスの状況
「クリトン」は、ソクラテスが死刑執行を待つ獄中で、友人のクリトンと繰り広げる対話を描いた作品です。クリトンは早朝、ソクラテスのもとを訪れます。彼は、ソクラテスが逃亡するための手筈を整えたことを告げ、逃亡を強く勧めます。クリトンは、ソクラテスを見捨てたくないという個人的な感情に加え、ソクラテスが逃亡しないことで、彼を陥れた者たちの思うつぼみになること、また、残される家族のことを心配していました。
ソクラテスの主張と「法の体現者」の登場
一方のソクラテスは、クリトンの申し出を冷静に受け止めながらも、逃亡という行為が本当に正しいことなのかを問います。彼は、感情に流されることなく、理性に従って行動すべきだと主張します。そして、正しいか間違っているか分からないことをするよりも、むしろ死を選ぶべきだと述べます。
議論の中で、ソクラテスは「法の体現者」という想像上の存在を登場させます。法の体現者は、ソクラテスに対して、アテナイで生まれ育ちながら、その法律に従わずに逃亡することは不正であると非難します。そして、国家と法律に対する市民としての義務を果たすことの重要性を説きます。
対話の結末と解釈
ソクラテスは、法の体現者の主張に同意し、逃亡は不正であると結論付けます。そして、クリトンの説得を断り、毒杯を仰いで死を迎えることを選びます。
「クリトン」における「秘密」は、ソクラテスがなぜそこまでして法に従うことを選んだのか、その真意にあります。それは、単に法に従うことが正しいからではなく、彼が生涯をかけて追求した「善く生きる」ことに繋がると信じていたからかもしれません。