## プラトンのクリトンの普遍性
不正な法律にも従うべきか?
プラトンの対話篇『クリトン』は、ソクラテスが死刑宣告を受け、脱獄を勧められるも拒否し、法への服従を選択するという物語を通して、法と正義の本質を問う作品です。舞台は古代アテネですが、そこで展開される議論は、現代社会にも通じる普遍的な問いを孕んでいます。
法への服従と個人の良心
クリトンは、ソクラテスが不当な裁判で死刑判決を受けたのは明らかであり、逃げることは正当化されると主張します。しかしソクラテスは、たとえ不正な法律であっても、法に従うことの重要性を説きます。彼は、法に背を向けることは、国家を破壊することになりかねないと考えます。
この議論は、法と個人の良心の間に葛藤が生じた際に、私たちはどう行動すべきなのかという、時代を超えた課題を提示しています。現代社会においても、法律や社会規範に疑問を抱くことは少なくありません。しかし、だからといって、自分の判断でそれらを無視して良いのでしょうか?『クリトン』は、この問いに対する容易な答えを与えることなく、読者に深く考えさせるのです。
国家との契約関係
ソクラテスは、アテネで生まれ育ち、その法の恩恵を受けてきたことを強調します。そして、国家と市民の間には、暗黙の契約関係のようなものが存在し、市民は法に従うことでその契約を履行していると主張します。
この国家と個人の契約関係という概念は、現代の社会契約論にも通じるものがあります。私たちは、自由や権利を享受する代わりに、法に従い、社会秩序の維持に協力する義務を負っています。『クリトン』は、私たちが普段意識することのない、国家との関係性について改めて考えさせてくれます。