プラトンのクリトンの位置づけ
ソクラテスの弁明との関係性
「クリトン」は、ソクラテスの裁判を描いた「ソクラテスの弁明」の続編として位置付けられています。「ソクラテスの弁明」では、ソクラテスがアテネの陪審員団に対して自らの無実を訴え、無知の知や国家への忠誠など、彼の哲学的信念が展開されます。一方、「クリトン」では、死刑判決を受けたソクラテスが、親友クリトンから脱獄を勧められるものの、それを拒否し、法に従って毒杯を飲むことを選択する様子が描かれます。
プラトンの対話篇における位置づけ
「クリトン」は、プラトンの初期対話篇に分類され、一般的には「エウテュプロン」「ソクラテスの弁明」「パイドン」と合わせて「テトラロギア」を構成するとされています。これらの作品群は、ソクラテスの逮捕から死に至るまでの出来事を時系列に沿って描き、彼の哲学と思想、そして人格を浮き彫りにしています。「クリトン」は、「ソクラテスの弁明」で示されたソクラテスの信念、特に法への忠誠心について、具体的な行動を通してより深く掘り下げる役割を担っています。
政治哲学上のテーマ
「クリトン」は、法と正義、国家と個人、道徳的義務といった普遍的なテーマを扱っており、政治哲学上の古典として読み継がれてきました。ソクラテスは、たとえそれが不当なものであっても、法に従うことが市民としての義務であると主張し、個人の利益よりも法の支配を優先する立場を取ります。このソクラテスの主張は、法治主義や社会契約論の先駆的な思想として解釈されることがあります。
解釈上の多様性
「クリトン」は、短い作品ながら、その解釈には多様性が見られます。ソクラテスの法への絶対的な服従を肯定的に捉える解釈がある一方で、彼の主張には無理があり、国家による個人の抑圧を正当化する危険性を孕んでいるという批判もあります。また、ソクラテスの選択は、彼の哲学的信念に基づくものではなく、単にアテネ社会における名誉や評判を重視した結果であるという解釈も存在します。
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