## プラトンの『パイドン』の美
美の本質について
『パイドン』において、美自体は明確な定義を与えられていません。ソクラテスは、むしろ美の概念を用いて、魂の不死やイデア論といったより大きな哲学的問題について議論を進めます。
対話の中で、美は感覚的なものと区別され、永遠不変のイデアとしての「美そのもの」が存在するとされます。美しいもの、例えば美しい身体や美しい色は、時間とともに変化し、やがては美しさを失ってしまいます。しかし、「美そのもの」は永遠に美しく、変化することはありません。
感覚的な美とイデアの美
ソクラテスは、私たちが美しいものを見るとき、それは「美そのもの」を思い起こさせるからだと説明します。 つまり、私たちが感覚的に経験する美は、イデアの美の不完全な模倣に過ぎません。
美と魂
ソクラテスは、真の哲学者は身体の束縛から解放され、魂が「美そのもの」を含むイデアの世界へと向かうことを目指すべきだと主張します。
肉体的な美は一時的なものに過ぎず、真の美は永遠不変のイデアの世界にのみ存在すると考えられています。そして、魂は肉体という牢獄から解放されることで、初めて真の美を認識することができるとされます。
美と愛
『パイドン』では、美は愛とも結びつけられています。 美しいものへの愛は、それを超えた「美そのもの」への憧れへと私たちを導くものであり、哲学的探求の出発点となりえます。
『パイドン』における美についての議論は、断片的にしか語られていません。しかし、プラトンの思想全体において、美は重要な概念であり、『饗宴』などの対話篇でより深く考察されています。