## プラトンの『ティマイオス』と言語
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宇宙論と神話的言語
『ティマイオス』は、プラトンの後期対話篇の一つであり、宇宙の創造、自然、人間の構成などについて論じられています。この対話篇の特徴の一つは、宇宙論の説明に神話的な言語が頻繁に用いられていることです。ティマイオスは、宇宙の創造を説明する際に、創造神であるデミウルゴスが「永遠なるもの」を模倣して世界を形作ったという神話を語ります。
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言語の不完全性
『ティマイオス』では、感覚的に認識できる物質世界は、イデアという永遠不変の実在の「似像」に過ぎないとされます。言語もまた、イデアを完全に表現することはできず、常に不完全なものであるという認識が示されています。ティマイオスは、「言葉は動く像である」と述べ、言語がイデアを直接指し示すのではなく、あくまでも間接的に表現するものであることを強調しています。
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比喩とアナロジー
言語の不完全性を克服するために、『ティマイオス』では比喩やアナロジーが頻繁に用いられています。例えば、宇宙の創造を説明する際に、デミウルゴスが世界を「壺」のように形作ったという比喩が用いられます。また、人間の魂を説明する際には、魂を「戦車」とその「御者」、そして「二頭の馬」に喩えています。これらの比喩は、抽象的な概念をより具体的に理解させるために有効な手段として機能しています。
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数学的言語
『ティマイオス』では、神話的言語や比喩だけでなく、数学的な言語も重要な役割を果たしています。ティマイオスは、宇宙の秩序や調和を説明する際に、幾何学や音楽理論を用いています。例えば、世界を構成する四大元素(火、空気、水、土)は、それぞれ正四面体、正八面体、正二十面体、正六面体という幾何学的な形と対応付けられています。また、天体の運動は、音階のような数学的な比率に従っていると説明されています。
これらのことから、『ティマイオス』における言語は、単なる情報伝達の手段ではなく、宇宙の秩序や人間の魂といった深遠な真理を探求するための重要なツールとして位置付けられていると言えるでしょう。