## ブローデルの地中海を面白く読む方法
### 1. 地中海世界への旅立ちとして捉える。
フェルナン・ブローデルの『地中海』は、従来の歴史書とは一線を画す壮大なスケールを持つ作品です。地中海という広大な舞台を背景に、16世紀という時代を、政治、経済、社会、文化、環境など、あらゆる側面から描き出しています。しかし、その膨大な情報量と独特な文体から、読破すること自体が困難な書物としても知られています。
そこで、本書を「読む」のではなく、地中海世界への「旅」として捉えてみてはいかがでしょうか。ブローデルは読者を、青い海が広がる世界へと誘う、情熱的なガイド役です。彼と共に、活気あふれる港町を散策し、壮絶な海戦を目撃し、当時の生活を肌で感じ取っていくうちに、地中海世界の魅力に引き込まれていくことでしょう。
### 2. 地図や図表を積極的に活用する。
ブローデルは、地中海を理解する上で地理的な要素が重要であると説いています。本書には、当時の地図や図表が豊富に掲載されていますので、積極的に活用しましょう。例えば、ある都市について書かれた箇所を読む際には、地図上でその都市の位置を確認し、周辺の地形や他の都市との関係性を把握することで、より深く理解することができます。
また、貿易に関する記述を読む際には、商品の流れを示した図表を参照することで、当時の経済活動がより具体的にイメージできるようになります。地理的な視点を持つことで、ブローデルの描く地中海世界をより立体的に捉えることができるでしょう。
### 3. 関心のあるテーマから読み進める。
『地中海』は、一貫したストーリーに沿って書かれているわけではありません。歴史、経済、文化、環境など、様々なテーマが複雑に絡み合いながら、壮大な地中海世界を描き出しています。そのため、最初から順番に読み進めることに固執する必要はありません。
まずは、目次や索引を参考に、自分が特に興味のあるテーマを探してみましょう。例えば、「海賊」に興味があるなら、関連する章や節を読み進めることで、当時の海賊の実態や地中海世界に与えた影響について深く知ることができます。このように、自分の関心に従って自由に読み進めることで、飽きることなく、楽しみながら地中海世界を理解することができます。
### 4. ブローデルの視点に注目する。
ブローデルは、歴史を長期的な視点から捉える「長期持続」という概念を提唱したことで知られています。彼は、地中海世界を特徴づける風土や気候、交易路といった要素が、長い時間をかけて人々の生活や社会構造に影響を与えてきたことを明らかにしました。
本書を読む際には、ブローデルの視点に注目し、歴史の表層的な出来事の背後に潜む、長期的な構造や変化を読み解くことを意識しましょう。例えば、16世紀に起きた海戦について書かれた箇所を読む際には、単なる戦術や勝敗だけでなく、その背景にある地中海世界の勢力図や経済的な要因、そして長期的な影響について考察することで、より深い理解を得ることができます。