ブローデルの地中海に匹敵する本
比較対象:フェルナン・ブローデル『地中海』
歴史家フェルナン・ブローデルの代表作『地中海』は、従来の歴史書とは一線を画す画期的な作品でした。16世紀のヨーロッパと地中海世界を舞台に、政治や戦争といった従来の歴史叙述の中心的なテーマを背景に退け、地理や気候といった長期持続的な要素を重視し、人々の生活や文化、経済活動といった多様な側面から歴史を描いた点が、従来の歴史観を覆す画期的な試みとして評価されています。
文明の枠組みを超えて:ウィリアム・マクニール『疫病と世界史』
ブローデルの『地中海』と同様に、従来の歴史観に大きな影響を与えた作品として、ウィリアム・マクニールの『疫病と世界史』が挙げられます。マクニールは、人類の歴史を疫病との闘いという視点から捉え直し、ペストや天然痘といった感染症が文明の興亡や人類の移動、社会構造に決定的な影響を与えてきたことを明らかにしました。
従来の歴史書では、政治や戦争、経済といった要素に比べて、疫病の影響は軽視されがちでした。マクニールは、膨大な史料を駆使して疫病がもたらした社会、経済、文化への影響を描き出すことで、人類史における疫病の重要性を浮き彫りにしました。
比較のポイント:スケールと視点の転換
ブローデルの『地中海』とマクニールの『疫病と世界史』は、どちらも従来の歴史観を大きく転換させた点で共通しています。ブローデルは、政治や戦争といった短期的な出来事ではなく、地理や気候といった長期持続的な要素を重視することで、歴史をより大きなスケールで捉え直しました。
マクニールも同様に、疫病という新たな視点を導入することで、従来の歴史叙述では見過ごされてきた人類史のダイナミズムを明らかにしました。どちらの作品も、従来の歴史の枠組みを超えて、新たな歴史像を提示したという点で、ブローデルの『地中海』に匹敵する歴史的名著と言えるでしょう。