## ブローデルの地中海と時間
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ブローデルの歴史観
フェルナン・ブローデルは、20世紀を代表するフランスの歴史家であり、アナール学派の第二世代の中心人物です。従来の歴史学が政治や事件といった短期的な変化に焦点を当てていたのに対し、ブローデルは長期持続する構造や変化の遅い時間に着目しました。
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地中海における多層的な時間
ブローデルの代表作『地中海』は、16世紀の地中海世界を舞台に、その歴史を多層的な時間軸から分析した画期的な著作です。ブローデルは、歴史を以下の三つの時間層に区分しました。
* **地理的時間（la longue durée）：** 環境、気候、地形など、ほとんど変化しない、あるいは非常にゆっくりと変化する地理的条件が作り出す時間。地中海世界においては、地中海という温暖で航海に適した閉鎖的な海が、この地域の文明や歴史に大きな影響を与え続けてきました。
* **社会的時間（le temps social）：** 社会構造、経済システム、文化、 mentalitéといった、ゆっくりと変化する社会的な時間。地中海世界では、帝国の興亡や宗教改革といった大きな変化はあっても、交易ネットワークや都市と農村の関係、家族や共同体のあり方などは、長い時間をかけてゆっくりと変化してきました。
* **出来事の時間（le temps des événements）：** 政治的事件、戦争、革命といった短期的で表面的な変化が目立つ時間。従来の歴史学が主に扱ってきたのは、この出来事の時間でした。ブローデルは、出来事の時間は歴史の表層に過ぎず、その背後にある地理的時間や社会的時間に目を向けることで、歴史の本質が見えてくると考えました。
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地中海：歴史の舞台
ブローデルは、地中海という地域を、これらの多層的な時間が織りなす歴史の舞台として捉えました。地中海は、その地理的条件から、古代から様々な文明が交流し、衝突する場となってきました。ブローデルは、16世紀の地中海世界を、オスマン帝国、スペイン、イタリア都市国家といった政治勢力がせめぎ合う中で、活発な交易や文化交流が行われていた様子を、詳細なデータや資料に基づいて描き出しました。
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時間概念の影響
ブローデルの歴史観は、その後の歴史学に大きな影響を与え、社会史、経済史、文化史など、様々な分野で長期持続という視点が重視されるようになりました。また、ブローデルの著作は、歴史学の枠を超えて、地理学、社会学、人類学など、様々な分野の研究者に影響を与えています。