ブレヒトの三文オペラの選択
登場人物の選択について
ベルトルト・ブレヒトの『三文オペラ』は、ジョン・ゲイの18世紀のバラッド・オペラ『乞食オペラ』を翻案した作品であり、登場人物の選択もその影響を色濃く反映しています。オリジナル作品に登場する盗賊、娼婦、乞食といった社会の底辺に生きる人々は、ブレヒト版においても重要な役割を担っています。
まず、主人公であるメッキー・メッサーは、ロンドンの裏社会を牛耳る盗賊団の首領であり、その冷酷さとカリスマ性で人々を魅了します。彼は、ゲイの『乞食オペラ』における悪名高い盗賊頭、キャプテン・マックヒースの翻案であり、社会の道徳や権威に対する反逆者としての側面を強く打ち出しています。
一方、娼婦のポリー・ピーチャムは、メッキーと恋に落ちる純粋な女性として描かれます。彼女は、父親であるピーチャムを出し抜いてまでメッキーとの愛を貫こうとする情熱的な一面も持ち合わせています。ポリーの存在は、メッキーの冷酷な一面と対比をなすことで、彼の複雑な人間性を浮き彫りにしています。
ピーチャムは、ロンドンの乞食たちを組織して生計を立てている悪徳商人であり、娘のポリーをメッキーから引き離そうと画策します。彼は、自分の利益のために権力者と結託するなど、狡猾で自己中心的な性格の持ち主として描かれています。
これらの登場人物たちは、いずれも社会の規範から逸脱したアウトサイダーであり、彼らの生き様を通して、ブレヒトは当時の資本主義社会における貧困、格差、道徳の崩壊といった問題を浮き彫りにしようとしたと考えられます。