## ブルデューの社会学の社会学を読む
「社会学の社会学」の位置づけ
ピエール・ブルデューは、20世紀後半のフランスを代表する社会学者の一人であり、その膨大な著作群は、社会学のみならず、哲学、人類学、歴史学、文学など多岐にわたる分野に影響を与えてきました。「社会学の社会学」は、ブルデュー自身の社会学的方法論や認識論を、彼自身の言葉で解説した重要な著作群を指します。これらの著作は、ブルデュー社会学の基盤となる概念、例えば「ハビトゥス」「資本」「場」「象徴的暴力」などを理解する上で欠かせないだけでなく、社会科学における客観性と科学性、研究者と研究対象との関係といった、より普遍的な問題提起も含んでいます。
主要な著作とテーマ
「社会学の社会学」を構成する主要な著作としては、『科学の科学と反省的社会学』(1972年)、『実践感覚』(1980年)、『ディスタンクシオン:趣味判断の社会学的批判』(1979年)などが挙げられます。これらの著作において、ブルデューは、社会科学における客観性の問題を、自らの経験と社会的な位置づけを分析の対象とする「反省性」という概念を通じて探求しています。
「反省性」と社会学的実践
ブルデューにとって「反省性」とは、単なる内省や自己批判ではなく、研究者自身の社会的位置や思考様式、すなわち「ハビトゥス」が研究対象の認識にどのような影響を与えるのかを客観的に分析することを意味します。彼は、社会科学者もまた特定の社会集団に属し、その集団特有の「ハビトゥス」や「思考の図式」に規定されている以上、客観的な観察者であることは不可能だと主張します。
方法論としての「客体化された客体化」
そこでブルデューが提唱するのが、「客体化された客体化」という方法論です。これは、研究者自身の「ハビトゥス」や「場」における位置づけを客観的に分析し、その上で研究対象を分析することによって、より客観的な認識に近づこうとする試みです。ブルデューは、自らの出身階級や教育機関における経験を分析対象とすることで、自身の「ハビトゥス」がどのように形成されてきたのかを明らかにし、それが研究活動にどのような影響を与えるのかを考察しています。
社会学の社会学的分析
さらにブルデューは、「社会学の社会学」において、社会学という学問分野自体もまた、特定の「場」における権力闘争や社会的な布置の影響を受けていることを明らかにしようとしました。彼は、社会学者が無意識のうちに特定のイデオロギーや権力構造を再生産している可能性を指摘し、社会学の「科学性」を担保するためには、絶え間ない自己批判と方法論の革新が必要であると主張しました。