## ブルクハルトのイタリア・ルネサンスの文化の思想的背景
###
ヘーゲル哲学の影響
ブルクハルトはベルリン大学で、当時の代表的なヘーゲル主義者であるレオポルト・フォン・ランケに歴史学を学びました。ヘーゲル哲学、特に歴史哲学はブルクハルトの思想に大きな影響を与えました。ヘーゲルは歴史を精神の展開過程と捉え、各時代はそれぞれの精神を具現化しているとしました。ブルクハルトはヘーゲルの歴史観を背景に、ルネサンスを中世という「暗黒時代」を超えて、近代へと繋がる転換点と捉えました。
###
古典古代への憧憬
ブルクハルトはヘーゲルの影響を受けつつも、ヘーゲルが重視した国家ではなく、個人の内面や文化に注目しました。彼はルネサンス期に、古代ギリシャ・ローマ文化に回帰することで、人間性や個人の自由が解放されたと考えました。そして、古代の美術や文学を研究し、ルネサンス期の文化と比較することで、その独自性を浮き彫りにしようとしました。
###
ロマン主義の影響
ブルクハルトはヘーゲル哲学と並行して、当時のドイツで流行していたロマン主義の影響も強く受けていました。ロマン主義は、理性や啓蒙主義への反動として、感情や主観、個人の感性を重視する思想でした。ブルクハルトはロマン主義的な歴史観に基づき、ルネサンス期を、個人の才能が開花し、芸術や文化が爛熟した時代として、情熱的に描き出しました。
###
美術史的方法
ブルクハルトは歴史を政治や経済だけでなく、美術や文化といった側面から捉えることの重要性を強調しました。彼は特に美術作品を時代の精神を反映する鏡と考え、絵画や彫刻などの視覚資料を歴史研究に積極的に活用しました。彼の著作である「イタリア・ルネサンスの文化」では、多数の美術作品が引用され、彼の美術史的方法が遺憾なく発揮されています。