## ブルクハルトのイタリア・ルネサンスの文化の力
ブルクハルトの主張
ヤコブ・ブルクハルトは、1860年に出版された著書『イタリア・ルネサンスの文化』の中で、14世紀から16世紀にかけてのイタリアは、中世の桎梏を断ち切り、
近代的な個人主義や合理主義が花開いた時代であったと主張しました。彼は、この時代のイタリア人たちが、古代ギリシャ・ローマ文化を復興させることで、
人間中心の世界観を獲得し、芸術、文学、建築、政治、科学など、あらゆる分野で偉大な業績を残したと論じました。
具体的な論拠
ブルクハルトは、彼の主張を裏付けるために、当時のイタリアの様々な側面を分析しました。
1. 個人の解放
ブルクハルトは、ルネサンス期に個人主義が台頭したことを強調しました。彼は、中世においては、個人が社会的な身分や宗教的な教義に縛られていたのに対し、
ルネサンス期になると、個人が自身の才能や能力を自由に発揮できるようになったと主張しました。彼は、レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロのような、
多岐にわたる分野で才能を発揮した「万能人」の存在を、この時代の個人主義の象徴として挙げました。
2. 古典の復興
ブルクハルトは、古代ギリシャ・ローマ文化の復興が、ルネサンス期の重要な原動力となったと主張しました。彼は、イタリア人たちが、古代の文学、哲学、芸術を
研究し、模倣することで、人間中心の世界観や美的感覚を育んだと論じました。彼は、フィリッポ・ブルネレスキによるフィレンツェ大聖堂のドーム建設や、
レオナルド・ダ・ヴィンチによる人体解剖図などが、古代の建築や彫刻の技術を復興させた好例であると指摘しました。
3. 世俗精神の高まり
ブルクハルトは、ルネサンス期には、宗教的な権威が低下し、世俗的な価値観が台頭したことを指摘しました。彼は、中世においては、教会が社会の中心的な存在であり、
人々の生活を支配していたのに対し、ルネサンス期になると、都市国家の発展や商業の活性化に伴い、世俗的な権力や富が重視されるようになったと主張しました。
彼は、マキャベリの『君主論』やボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』などが、当時の世俗精神を反映した作品であると分析しました。
影響と評価
ブルクハルトの『イタリア・ルネサンスの文化』は、ルネサンス研究の古典として、
今日まで多くの歴史家や文化人に影響を与え続けてきました。