フローベールの感情教育を読んだ後に読むべき本
**1. 失われた時を求めて（マルセル・プルースト）**
プルーストの”失われた時を求めて”は、フローベールの”感情教育”を読んだ後に自然と手に取るべき作品と言えるでしょう。”感情教育”が19世紀フランス社会を背景に、フレデリックという一人の男性の恋愛遍歴と挫折を描いたのに対し、”失われた時を求めて”は20世紀初頭のフランス貴族社会を舞台に、語り手である「私」の幼年時代から青年期を経て、芸術と人生の意味を見出していく過程を、圧倒的な長さで描き出します。
“感情教育”と”失われた時を求めて”には、いくつかの共通点が存在します。
* **恋愛への執着と幻滅**:
フレデリックが理想の女性像を追い求め続け、現実の女性との関係に失望を繰り返すように、プルーストの語り手もまた、様々な女性たちに恋心を抱き、その度に激しい感情の揺れ動きに翻弄されます。両作品は、恋愛における理想と現実の乖離、そして、そこから生じる苦悩や幻滅を、鋭く描き出しています。
* **時間と記憶**:
“感情教育”では、フランス革命という歴史的事件を背景に、登場人物たちの感情の変遷が、時の流れと共に鮮やかに浮かび上がります。”失われた時を求めて”においても、マドレーヌの味をきっかけに蘇る過去の記憶が、現在の「私」の意識に流れ込み、時間と記憶の複雑な関係を浮き彫りにします。両作品は、時間と共に移り変わる人間の感情や記憶を、繊細な筆致で描写しています。
“感情教育”を読み終えた後、プルーストの世界に触れることは、 フローベールが描いた19世紀フランス文学の系譜を辿り、その奥深さを更に体感する貴重な経験となるでしょう。 “失われた時を求めて”は、”感情教育”で描かれた恋愛の機微、社会の虚像、そして時間と記憶のテーマを、より深く、そして多角的に探求し、読者に新たな文学的感動を与えてくれるでしょう。