フローベールの感情教育の話法
語り手の視点
「感情教育」では、三人称単数・過去時制の語り手が用いられています。これは、19世紀のリアリズム小説において一般的な手法です。語り手は、作中人物の一人の視点に完全に寄り添うことはなく、常に一定の距離を保ちながら、客観的な視点を維持します。
自由間接話法
フローベールは、登場人物の意識と語り手の記述を融合させる「自由間接話法」を効果的に用いています。これにより、読者は登場人物の思考や感情を、まるでその人物になったかのように追体験することができます。例えば、フレデリックがアルヌ夫人に恋心を抱く場面では、彼の高揚感や不安が、語り手の客観的な描写と自然に融合し、読者はフレデリックの心の動きをリアルに感じ取ることができます。
詳細な描写
フローベールは、情景、人物、行動などを詳細に描写することに長けています。視覚、聴覚、触覚、嗅覚などを駆使した描写は、読者にまるでその場に居合わせるかのような臨場感を与えます。例えば、パリの街並みや社交界の華やかさ、革命の騒乱などは、読者が五感で感じ取れるほど鮮やかに描かれています。
反復と対比
フローベールは、物語の中で特定のモチーフや状況を意図的に反復させることで、登場人物の成長のなさを強調しています。例えば、フレデリックは、物語の始めと終わりで、ほとんど同じように、満たされない思いを抱えています。また、登場人物たちの行動や運命を対比させることで、社会の不条理さや人間の愚かさを浮き彫りにしています。