## フローベールの感情教育の世界
###
19世紀フランス社会の描写
「感情教育」は、7月王政から二月革命、第二共和政を経て第二帝政に至る19世紀フランスを舞台に、当時の社会階層、政治動乱、人々の生活を克明に描いています。
小説では、七月王政期の退屈と停滞、1848年革命の熱狂と混乱、その後の第二共和政の不安定さ、そして第二帝政下の物質主義と退廃が、登場人物たちの行動や心理を通して鮮やかに浮かび上がります。
特に、1848年革命の描写は圧巻であり、民衆の熱狂、バリケードの建設、戦闘の生々しさなどが、当時の記録や証言に基づいてリアルに再現されています。この革命は、主人公フレデリックの青春と挫折の象徴的な出来事として、物語全体に暗い影を落とします。
###
主人公フレデリックの恋愛と挫折
物語の中心となるのは、地方出身の青年フレデリック・モローの、上流階級の夫人アルヌ夫人への報われぬ恋です。フレデリックは、美貌と気品を兼ね備えたアルヌ夫人に激しい恋心を抱きますが、彼女は彼にとって高嶺の花であり、二人の関係は社交辞令と微妙な感情の行き違いの中で進んでいきます。
フレデリックは、アルヌ夫人への想いを募らせながらも、他の女性たちとも関係を持ち、優柔不断で意志の弱い側面を見せます。彼は、芸術家として成功することを夢見ていますが、具体的な行動を起こすことができず、結局は平凡な人生を送ることになります。
###
様々な人間模様
「感情教育」には、フレデリックとアルヌ夫人以外にも、個性的な登場人物たちが多数登場します。野心家のジャーナリスト、デローリエ、純粋だが現実を見ることができない画家、セヌカル、裕福な銀行家の娘、ロザリなど、それぞれの欲望や葛藤が交錯し、複雑な人間模様を織りなしていきます。
これらの登場人物たちは、当時のフランス社会における様々な階層や職業を代表しており、彼らの生き様を通して、愛、野心、友情、裏切りといった普遍的なテーマが描かれています。