フローベールのサランボーを面白く読む方法
古代カルタゴの世界観に浸る
「サランボー」は紀元前3世紀、古代カルタゴを舞台とした歴史小説です。当時のカルタゴは、地中海貿易で栄えた強大な軍事都市国家でしたが、ローマとのポエニ戦争で敗北し、歴史から姿を消しました。フローベールはこの滅亡した帝国にロマンを感じ、膨大な量の資料を基に、その文化、宗教、風俗、習慣、街並みなどを詳細に描写しています。
作品を楽しむためには、まずこの古代カルタゴの世界観にどっぷりと浸ることが重要です。当時のカルタゴ人は、どのような価値観を持ち、どんな生活を送っていたのか？ 戦争や宗教は彼らの生活にどのような影響を与えていたのか？ 想像力を働かせながら読み進めてみてください。
登場人物たちの愛憎劇を追う
「サランボー」は、カルタゴの将軍ハミルカルの娘サランボーと、傭兵隊長マトーとの悲恋を軸に物語が展開されます。誇り高く美しいサランボー、野蛮ながらも勇敢なマトー、狡猾な宦官スポンドゥアス、残忍な女神官シャハバラニムなど、個性豊かな登場人物たちが織りなす愛憎劇は、息を呑むような面白さに満ちています。
それぞれの登場人物の背景や心情を想像しながら読み進めることで、彼らの行動の動機や関係性がより深く理解できるようになり、物語への没入感が高まります。フローベールは登場人物たちの内面描写にも優れているため、彼らの葛藤や苦悩に共感することで、より深く作品世界に入り込むことができるでしょう。
華麗で残酷な描写を楽しむ
「サランボー」は、その華麗で残酷な描写でも知られています。戦闘シーンの迫力は圧巻であり、古代都市の賑わい、神殿の壮麗さ、自然の描写なども、まるで目の前で繰り広げられているかのように生き生きと描かれています。一方で、残酷な描写も少なくありません。当時の宗教儀式や風習の描写は衝撃的であり、戦争の悲惨さを訴えかける描写は、読者に強いインパクトを与えます。
フローベールの筆致は、美しくも残酷な古代世界をありありと描き出します。その描写の一つ一つを味わいながら読み進めることで、より深く作品世界に没入し、「サランボー」の世界を五感で体感することができるでしょう。