## フローベールのサランボーの周辺
サランボーの執筆背景
ギュスターヴ・フローベールが「サランボー」を執筆したのは、1857年から1862年にかけてのことです。前作「ボヴァリー夫人」が風紀紊乱で訴追されたことによる精神的疲労から、フローベールは古代カルタゴに舞台を移した作品を構想しました。彼は歴史的正確さを期すため、1858年には実際にチュニジアを旅行し、カルタゴの遺跡などを訪れています。
物語の舞台と時代背景
紀元前3世紀、第一次ポエニ戦争後のカルタゴを舞台に物語は展開されます。傭兵としてカルタゴに仕えていたが、報酬が支払われずに反乱を起こした傭兵たちと、カルタゴの将軍ハンニバルの父であるハミルカル・バルカとの戦いが描かれます。
主要登場人物
* **サランボー:** カルタゴの最高神官ハミルカル・バルカの娘で、物語のヒロイン。神秘的な美しさを持ち、物語の中心人物となります。
* **マート:** 傭兵軍の首領の一人で、サランボーに恋をする。勇猛な戦士だが、同時に野蛮で残忍な一面も持ち合わせています。
* **ハミルカル・バルカ:** カルタゴの将軍で、サランボーの父。冷酷で計算高い人物として描かれます。
* **ナラ・ハバス:** 傭兵軍の預言者。狡猾で陰湿な策略家として、物語に大きく関わってきます。
作風と特徴
「サランボー」は、歴史小説の形式をとりながらも、史実にとらわれない壮大なスケールと、官能的なまでの描写が特徴です。フローベールは綿密な時代考証に基づきながら、独自の想像力を駆使して、古代カルタゴの世界を鮮やかに描き出しています。
当時の評価と影響
「サランボー」は発表当時、その残虐な描写や異国趣味が原因で賛否両論を巻き起こしました。しかし、その後の文学作品に与えた影響は大きく、歴史小説の新たな可能性を切り開いた作品として評価されています。