Skip to content Skip to footer

フローベールのサランボーから学ぶ時代性

フローベールのサランボーから学ぶ時代性

サランボーに見る古代カルタゴの社会と文化

ギュスターヴ・フローベールの歴史小説『サランボー』は、紀元前3世紀の第一次ポエニ戦争後のカルタゴを舞台に、ハンニバルの妹である架空の王女サランボーと、傭兵隊長マートの許されぬ恋を描いています。フローベールは、膨大な資料を読み込み、当時の風俗、宗教、習慣などを克明に描写することで、古代カルタゴ社会を活き活きと蘇らせました。

宗教観と残酷な描写

作中には、豊饒と月の女神であるタニットへの信仰、生贄を捧げる儀式、そして戦乱と隣合わせの不安定な社会情勢が描かれています。特に目を引くのは、その残酷な描写です。敵味方の区別なく虐殺が行われ、捕虜は容赦なく処刑されたり、奴隷として売り飛ばされたりします。また、生贄の場面は生々しく、当時の宗教観の恐ろしさを現代に伝えています。

オリエンタリズムの影響

『サランボー』は、当時のヨーロッパに蔓延していたオリエンタリズムの影響を強く受けています。オリエンタリズムとは、西洋が東洋を異質なもの、野蛮なものとみなし、ステレオタイプ化して描いた態度や思想のことです。フローベールは、カルタゴを、官能的で、残酷で、神秘的な場所として描いています。

植民地主義との関連

『サランボー』が執筆された19世紀は、ヨーロッパ列強によるアフリカ大陸の植民地化が進んでいた時代です。作中で描かれる、カルタゴの人々に対するローマ人の態度は、当時の西洋人がアフリカやアジアの人々に対して抱いていた、優越意識や蔑視の感情を反映しているとも言えます。

歴史小説の枠を超えた現代性

『サランボー』は、単なる歴史小説ではなく、人間の欲望、暴力、愛憎といった普遍的なテーマを描いた作品でもあります。現代社会においても、宗教対立、民族紛争、テロリズムなど、作中で描かれた問題と共通する状況は後を絶ちません。フローベールは、過去の出来事を描くことを通して、人間の根源的な部分に鋭く迫っています。

Amazonで購入する

Leave a comment

0.0/5