## フロイトのヒステリー研究の思考の枠組み
フロイトが「ヒステリー研究」で扱ったテーマとは?
フロイトは、ヨーゼフ・ブロイアーとの共同研究をもとに、1895年に「ヒステリー研究」を出版しました。この著作でフロイトは、当時、神経症の一種とされ、主に女性に多く見られるとされていた「ヒステリー」について、その原因と治療法を探求しました。
「ヒステリー」の原因を「精神」に見出したフロイトの着眼点とは?
当時の医学界では、ヒステリーは身体的な原因によって引き起こされると考えられていました。しかし、フロイトは、ヒステリーの患者たちの身体症状には、生理学的な説明がつかないことに気づきます。そして、患者の話を丁寧に聞き取る過程で、彼女たちの症状が、過去のつらい経験や抑圧された感情と深く結びついていることを発見しました。
「意識」と「無意識」の存在
フロイトは、人間精神を、意識、前意識、無意識の三層構造で捉えました。
* **意識**: 現時点で私たちが気づくことのできる思考や感情
* **前意識**: 意識にのぼってはいないものの、努力すれば思い出すことのできる記憶や経験
* **無意識**: 意識することができない、抑圧された欲望や衝動、記憶などが存在する領域
フロイトは、ヒステリーの症状は、この無意識下に抑圧された記憶や感情が、身体症状という形で表出されたものだと考えました。
「自由連想法」と「抵抗」
フロイトは、患者の無意識を探るために、「自由連想法」という手法を用いました。これは、患者に心に浮かぶことを、どんな些細なことでも、隠さずに自由に話してもらうというものです。
しかし、患者は、過去のつらい経験や、社会的に受け入れられないと感じる欲望などを語るとき、無意識に抵抗を示すことがあります。フロイトはこの「抵抗」こそが、抑圧された記憶や感情に近づいているサインだと考えました。
幼児期の性的体験と「心的外傷」
フロイトは、ヒステリーの原因を探る中で、幼児期の性的体験が、後の精神状態に大きな影響を与えるという考えに至りました。彼が「心的外傷」と呼んだ、幼児期の性的虐待体験は、無意識の領域に抑圧され、それが成人後のヒステリーなどの神経症を引き起こすと考えたのです。
「転移」という現象
フロイトは、治療の過程で、患者が治療者に対して、過去の重要な人物(例えば、両親など)に対する感情を向け直す「転移」という現象が起こることを発見しました。
転移は、患者が過去のつらい経験や抑圧された感情を、治療者との関係性の中で再び体験し、それを通して、症状からの回復を目指すために重要なプロセスだと考えました。