## フリードマンの「資本主義と自由」の美
経済的自由と政治的自由の密接な関係性について
フリードマンは、本書全体を通して一貫して、経済的自由と政治的自由は不可分の関係にあると主張しています。彼によれば、市場における自由な経済活動は、個人が自身の能力や才能を最大限に発揮し、自己実現を追求するための必要不可欠な要素です。そして、この経済的自由こそが、政治的自由、すなわち、言論や集会の自由、政府に対する批判や反対を表明する自由の基礎となるのです。
中央集権的な政府による経済への介入は、個人の経済活動を制限し、その結果として、政治的な自由をも奪うことに繋がるとフリードマンは警告します。なぜなら、経済的な資源配分を政府がコントロールするようになれば、必然的に、人々の生活や行動に対する政府の影響力は増大するからです。そして、政府の権力が過度に肥大化すれば、個人の自由や権利が侵害されるリスクは高まります。
フリードマンは、歴史的な事例を多数引用しながら、社会主義や共産主義といった、政府による経済統制を重視する体制下では、政治的自由が著しく制限されてきた事実を指摘します。一方で、資本主義や自由市場経済を採用する国々では、経済的な繁栄と共に、個人の自由や権利が尊重されてきたことを強調します。
市場メカニズムの効率性と自己調整機能への信頼
フリードマンは、市場メカニズムの効率性と自己調整機能に対する揺るぎない信頼を表明しています。彼によれば、自由な市場においては、需要と供給の関係によって、資源が最も効率的に配分されます。個々の経済主体は、自己の利益を追求する過程で、結果として、社会全体の利益にも貢献することになるという「見えざる手」の働きを、フリードマンは高く評価しています。
政府による市場介入は、この自己調整機能を阻害し、非効率性を招くとフリードマンは主張します。政府は、市場参加者のように、価格や数量といったシグナルを通じて、需要と供給のバランスを調整することはできません。むしろ、政府の介入は、資源の誤った配分や、市場の歪みを生み出す可能性があります。
フリードマンは、独占や外部経済効果といった、市場の失敗が認められる場合もあることを認めています。しかし、そのような場合においても、政府による直接的な介入は、問題を悪化させる可能性があると警告します。彼は、市場の失敗に対処するためには、競争促進や情報公開といった、市場メカニズムを活用した間接的なアプローチが有効であると主張します。
個人の責任と選択の自由の重視
フリードマンは、個人の責任と選択の自由を極めて重視しています。彼は、個人が自らの行動の帰結を負い、自らの人生を選択する自由を持つことが、自由社会の根幹を成すと考えています。
政府による過剰な福祉政策や所得再分配政策は、個人の責任感を低下させ、勤労意欲を阻害する可能性があるとフリードマンは指摘します。彼は、政府の役割は、あくまでも、機会の平等を保障することに限定されるべきであり、結果の平等を強制するべきではないと主張します。
フリードマンは、個人が自らの選択に基づいて、リスクを負い、挑戦する自由を持つことが、経済的な発展や社会の進歩に不可欠であると考えています。彼は、政府による過剰な規制や介入は、個人の創造性や起業家精神を阻害し、経済の停滞を招く可能性があると警告します。
これらの点に加えて、「資本主義と自由」では、教育、差別、独占、通貨政策など、多岐にわたるテーマについて、フリードマン独自の視点からの分析や提言が展開されています。