## フッサールの純粋現象学および現象学的哲学の諸問題の表象
表象とは何か
フッサールにおいて「表象」は、意識の指向性( Intentionalität)を特徴づける根本的な概念であり、意識が対象へと向かう際の中心的な働きを担います。ただし、表象は、外界に実在する対象のコピーやイメージとして理解されるべきではありません。フッサールは、伝統的な表象主義を批判し、意識と対象との間には、何らかの媒介物やイメージを必要としない、直接的な関係があると主張しました。
表象の構造
フッサールは、表象を、以下の三つの要素から成り立つ構造として分析しました。
* **ノエシス(noesis)**: 意識の働き、作用、志向性作用そのものを指します。例えば、知覚、想像、判断、感情といった意識の働きがノエシスに該当します。
* **ノエマ(noema)**: ノエシスに対応する、対象の与えられ方を規定するものです。ノエマは、対象そのものではなく、意識が対象をどのように捉え、意味づけているかを表します。
* **志向性(Intentionaliät)**: ノエシスとノエマを結びつける関係性であり、意識が対象へと向かう指向性そのものを指します。
表象の諸形態
フッサールは、表象が、知覚、記憶、想像、感情、意志行為など、様々な意識体験において、それぞれ特有の形態をとると考えました。例えば、知覚における表象は、現実に存在する対象を対象とする一方、想像における表象は、現実には存在しない対象を対象とします。また、感情における表象は、対象に対して特定の価値や意味づけを与えるものとなります。
表象と意味
フッサールにとって、表象は、単に対象を意識に現れさせるだけでなく、対象に対して意味を与える働きも持ちます。私たちは、表象を通じて、対象を特定の仕方で理解し、解釈します。この意味で、表象は、私たちの認識や思考、行動の基礎となる重要な要素と言えるでしょう。