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フッサールのヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学の対極

## フッサールのヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学の対極

フッサールの「ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学」は、西洋近代の客観主義的な科学観を批判し、人間の主観的な意識体験に立ち戻って学問を再構築しようと試みた著作です。この著作は、西洋思想史における重要な転換点となり、様々な分野に影響を与えました。一方で、フッサールの思想とは対照的な立場から、西洋近代の伝統を受け継ぎ、発展させようとする試みも存在しました。

フッサールの危機意識と現象学

フッサールは、第一次世界大戦後のヨーロッパの精神的な危機を背景に、「ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学」を執筆しました。彼は、近代科学の成功によって、学問が細分化・専門化し、本来の目的である「真理の探求」を見失っていると批判しました。そして、この危機を克服するために、人間の主観的な意識体験に焦点を当て、あらゆる偏見や先入観から自由になった「純粋意識」を基礎として学問を再構築することを目指しました。

対極としての論理実証主義

フッサールの現象学とは対照的に、20世紀前半にウィーン学団によって提唱された論理実証主義は、客観的な観察と論理的な分析に基づいて、科学的な知識を確立することを目指しました。彼らは、形而上学的な議論や主観的な解釈を排除し、経験的に検証可能な命題のみを meaningful なものと見なしました。

ウィーン学団の中心人物であるルドルフ・カルナップは、「世界の論理的構造」などの著作で、論理実証主義の立場から、言語の分析を通じて知識の体系化を試みました。彼は、全ての meaningful な命題は、論理記号と観察文を用いて表現できると主張し、形而上学的な議論や倫理的な主張は、認知的な内容を持たない擬似命題であると見なしました。

論理実証主義の代表的な著作:ルドルフ・カルナップ「世界の論理的構造」

カルナップの「世界の論理的構造」は、論理実証主義の立場から、知識の構造を分析し、科学的な世界像を構築しようとした野心的な試みです。彼は、言語の論理的な分析を通じて、世界の構造を明らかにできると考えました。

カルナップは、言語を構成要素に分解し、それぞれの要素がどのように世界と対応しているかを分析しました。彼は、観察文と呼ばれる、直接的な経験に基づいた命題を基礎として、より複雑な命題を構築していく方法を示しました。そして、科学的な法則や理論は、観察文の集合を一般化したものであり、論理的な推論によって導き出されると主張しました。

フッサールと論理実証主義:対立と共通点

フッサールの現象学と論理実証主義は、一見すると全く対照的な立場に見えます。フッサールは、主観的な意識体験を重視し、それを通じて世界の意味を理解しようとしました。一方、論理実証主義は、客観的な観察と論理的な分析を重視し、主観的な要素を排除しようとしました。

しかし、両者には共通点も存在します。どちらも、近代科学の抱える問題点を認識し、学問の基礎を問い直そうとしていた点です。フッサールは、科学の細分化・専門化によって、学問が全体的な視野を失っていると批判しました。論理実証主義も、形而上学的な議論や主観的な解釈が科学の発展を阻害すると考えました。

このように、フッサールの現象学と論理実証主義は、対照的な立場から、近代科学の抱える問題を克服しようとした試みとして捉えることができます。

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