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フッサールのヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学と時間

## フッサールのヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学と時間

フッサールの「ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学」における時間意識の考察

フッサールは、第一次世界大戦後のヨーロッパの学問、文化、精神の危機的状況を背景に、「ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学」を執筆しました。この著作でフッサールは、当時のヨーロッパの危機の根源を、近代科学の成功に由来する「客観主義」や「自然主義」といった思想的風潮に見出します。これらの思想は、人間の主観的な経験や意味の世界を軽視し、客観的な事実や法則のみを重視する傾向を生み出しました。その結果、人間存在の根源的な意味や価値が問い直されないまま、科学技術がひとり歩きし、人間疎外やニヒリズムが蔓延したとフッサールは批判します。

「生活世界」と時間意識

フッサールは、こうした危機を克服するために、近代科学の基礎づけ直しを主張します。そのために彼が着目するのが、「生活世界」という概念と、そこに成立する「時間意識」の構造です。生活世界とは、我々が日常的に経験する、主観的で意味に満ちた世界のことです。そして、この生活世界を成立させているのが、時間意識です。フッサールによれば、我々は、現在、過去、未来を一つの意識の流れとして経験することで、世界を意味あるものとして体験しています。

時間意識の構造

フッサールは、時間意識の構造を「 retention(保持)」、「 protention(先取り)」、「現在印象」という三つの要素を用いて分析します。現在印象は、現に意識に与えられている瞬間的な経験です。しかし、我々は、現在印象のみを断片的に経験しているのではありません。過去の経験は、保持として現在の意識に残り続け、未来への期待は、先取りとして現在の意識を方向づけます。このように、時間意識は、過去・現在・未来を一つの意識の流れとして統合することで、世界を意味あるものとして構成しています。

時間意識と客観的時間

フッサールは、このような時間意識の分析を通して、客観的時間という概念も、我々の主観的な時間意識を基礎として成立していることを明らかにしようとしました。近代科学は、客観的で均質な時間を前提としていますが、フッサールによれば、そうした時間は、我々の具体的な時間経験を抽象化し、数学的に構成されたものにすぎません。真に基礎となるのは、我々が生活世界において経験する、主観的で、具体的で、生き生きとした時間意識です。

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