フォークナーの響きと怒りを面白く読む方法

ウィリアム・フォークナーの『響きと怒り』は、その実験的な文体と複雑な構造で知られる、20世紀アメリカ文学の金字塔です。時間軸が入り乱れ、意識の流れの手法が用いられた語り口は、読者にとって大きな挑戦となります。しかし、難解さゆえに、その深奥に触れることを諦めてしまうのは惜しいことです。

作品を読み始める前に、舞台となるアメリカ南部の歴史や文化についてある程度の知識を持っておくと、コンテクストを理解する上で役立ちます。南北戦争と奴隷制の歴史、戦後の南部の没落と人々の精神的な疲弊は、作品を理解する上で重要な要素となります。

物語の中心となるのは、かつては名家であったものの、没落の一途をたどるコムソン家の人々です。複雑な人間関係とそれぞれの抱えるトラウマを理解することで、作品への理解がより深まります。家系図などを参考にしながら読み進めるのも有効です。

『響きと怒り』の特徴の一つは、時間軸が交錯する複雑な構成と、登場人物たちの意識の流れを捉えた語りのスタイルです。最初は混乱するかもしれませんが、頭で理解しようとせずに、登場人物たちの感情や思考の断片に身を任せてみましょう。

特に、知的障害を持つベンジーの語りでは、論理的な思考ではなく、感覚的なイメージや断片的な記憶が言葉となって現れます。彼の言葉の背後にある感情を読み取ろうとすることで、新たな発見があるかもしれません。

フォークナーはこの作品において、「時間」と「記憶」を重要なモチーフとして扱っています。登場人物たちは、それぞれ過去の出来事に囚われ、現在を生きることができません。繰り返し登場する過去の出来事や象徴的な言葉に注目することで、作品全体のテーマが見えてきます。

作品全体を通して、暗い影と希望の光のコントラストが描かれている点にも注目しましょう。登場人物たちの苦悩や絶望が描かれる一方で、かすかな希望や愛情の光も感じ取ることができます。

『響きと怒り』は、一度読んだだけでは全てを理解することは難しい作品です。しかし、読み返すたびに新たな発見があり、解釈が深まっていく奥深さを持っています。時間をかけてじっくりと作品と向き合い、自分なりの解釈を見つけていく喜びを味わってみてください。