## フォークナーの響きと怒りの発想
ウィリアム・フォークナーの小説『響きと怒り』の発想について、確実に分かっている情報は限られています。
フォークナー自身、この作品がどのように生まれたのか、断片的な発言しか残していません。しかし、彼が残したノートや手紙、そして作品自体から、いくつかの手がかりを読み取ることができます。
まず、作品の中心的なイメージである「 Caddy (キャディ)」の存在が挙げられます。
フォークナーは、木に登ったキャディの姿を鮮明に思い浮かべたことが、この小説の出発点だったと語っています。汚れのない白いパンツを泥で汚したキャディの姿は、コンプソン家の崩壊と喪失の象徴として、作品全体を貫く重要なモチーフとなっています。
また、フォークナーは「時間」というテーマにも深く関わっていました。
特に、過去と現在の交錯、時間の流れ方の違いを、登場人物たちの異なる視点を通して描こうとしたことがうかがえます。ベンジーの章では、過去の記憶が現在と混在し、断片的に語られることで、彼の内面世界が浮き彫りになります。一方、クエンティンは、失われた過去に固執し、時間の流れに抗おうとする姿が描かれています。
さらに、フォークナー自身の生い立ちや家族関係も、作品に影響を与えていると考えられています。
没落していく南部の貴族社会を舞台に、家族の崩壊や人間の愛と憎しみを描いている点は、フォークナー自身の体験と深く関わっていると言えるでしょう。