## フォークナーの響きと怒りの主役
### 主役は誰か?
ウィリアム・フォークナーの小説『響きと怒り』は、コンプソン家の没落と崩壊を、それぞれ異なる視点から語る4つの章で構成されています。
### 各章の語り手と焦点
* **第1章 (1928年4月7日):** ベンジー、コンプソン家の33歳の知的障害を持つ息子が語り手です。ベンジーの章は、断片的で非線形な意識の流れで書かれており、彼の感覚的経験と、特に妹のキャディに対する執着に焦点を当てています。
* **第2章 (1910年6月2日):** クェンティン、コンプソン家の長男が語り手です。クェンティンの章は、ハーバード大学での彼の一日を描き、キャディの処女喪失と、彼女に対する近親相姦的な執着に苦しんでいます。
* **第3章 (1928年4月6日):** ジェイソン、コンプソン家の次男が語り手です。ジェイソンの章は、冷酷で利己的な人物であり、キャディとその私生児であるクェンティンに対する憎しみに満ちています。
* **第4章 (1928年4月8日):** 作者であるフォークナー自身は、三人称全知の語り手として、この章では主に、黒人の家政婦ディルジーと、彼女が愛情深く世話をするキャディの娘、クェンティンに焦点を当てています。
### 主役は一人ではない?
『響きと怒り』は、単一の主人公を持つ小説ではなく、複数の視点から語られることで、コンプソン家の崩壊というより大きな物語に貢献する、多くの重要な登場人物がいると言えます。
### キャディの存在感
特に、コンプソン家の娘であるキャディは、物語全体に影を落とす重要な人物です。彼女は、兄弟たちの執着の対象であり、彼らの没落の触媒として機能します。しかし、キャディ自身は直接語ることはありません。
### 結論として
『響きと怒り』は、複数の視点を通じて、家族の崩壊、喪失、記憶、人種、ジェンダーなどの複雑なテーマを探求する多層的な小説です。明確な単一の主人公は存在せず、それぞれの登場人物が、この複雑な物語の理解に欠かせない独自の視点を提供しています。
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読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。