## フォークナーのサンクチュアリの感性
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頽廃と暴力
フォークナーの『サンクチュアリ』は、南部社会の道徳的な退廃と、そこから生じる暴力を容赦なく描写しています。舞台となるのは、禁酒法時代のミシシッピ州ヨクナパトーファ郡。かつては栄華を誇った旧家の一員であるポープ家は、没落の道を辿り、その象徴として、かつての豪邸は朽ち果てた廃墟と化しています。
登場人物たちは、それぞれに過去のトラウマや罪悪感を抱え、アルコール依存症、レイプ、殺人など、目を背けたくなるような現実と向き合わざるを得ません。特に、ヒロインであるテンプル・ドレイクは、自身の純潔を奪われた上に、その犯人であるブートレガーのポパイの愛人として、暴力と屈辱に満ちた日々を送ることになります。
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ゴシック的要素とグロテスクな描写
『サンクチュアリ』の感性を特徴づける要素として、ゴシック的な雰囲気と、グロテスクな描写が挙げられます。物語の舞台となるヨクナパトーファ郡は、じめじめとした湿地帯や、朽ち果てた廃墟など、陰鬱で閉鎖的な空間として描かれ、登場人物たちの不安や狂気を増幅させる役割を果たしています。
また、レイプシーンやリンチの場面など、暴力が生々しく描写され、読者に生理的な嫌悪感を与えるとともに、人間の残虐性や、社会の病理を浮き彫りにしています。特に、物語の終盤で描かれる、ポパイの愛人となったテンプルが、彼の死後、冷酷で無関心な態度を取る場面は、読者に深い衝撃を与えるとともに、彼女自身が暴力によって精神を蝕まれていることを暗示しています。