## フォークナーのアブサロム、アブサロム!の評価
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複雑な構成と語り口
「アブサロム、アブサロム!」は、複数の語り手によって、時間軸を行き来しながらサトペンの家の歴史が語られるという、非常に複雑な構成を持つ作品です。この複雑な構成と語り口は、読者にとって大きな挑戦となりますが、同時に作品の魅力の一つとなっています。
読者は、断片的な情報をつなぎ合わせ、パズルを解くように物語を読み進めていく必要があり、その過程で、登場人物たちの心理や真実に迫っていきます。また、それぞれの語り手には、独自の視点や解釈、偏見が存在し、それが物語の多層性を生み出しています。
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南部史の探求
作品は、南北戦争とその後の南部の衰退を背景に、サトペン一家というミクロコスモを通して、南部社会の複雑な歴史、人種差別、階級社会、家族の崩壊といったテーマを描いています。
特に、トーマス・サトペンという野心的な人物の栄光と没落は、南部の歴史そのものを象徴的に表しています。サトペンは、奴隷制度を基盤としたプランテーション経営で成功を収めますが、南北戦争によってその基盤を失い、没落していきます。
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人間の心の闇
「アブサロム、アブサロム!」は、人間の心の奥底にある、愛、憎しみ、野心、孤独、罪悪感といった複雑な感情を、容赦なく描き出しています。
登場人物たちは、それぞれの過去やトラウマを抱え、愛を求めながらも、裏切りや憎しみに苦しめられます。作品は、人間の心の闇を深く掘り下げることで、普遍的な人間存在の悲劇を浮かび上がらせています。
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実験的な文体
フォークナーは、「アブサロム、アブサロム!」において、意識の流れ、長々しい文章、独特の比喩表現、方言などを駆使した、実験的な文体を用いています。
この文体は、読者によっては難解と感じる場合もありますが、登場人物たちの心理や感情、南部の閉鎖的な雰囲気を表現する上で、非常に効果的です。