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フォークナーのアブサロム、アブサロム!の思索

フォークナーのアブサロム、アブサロム!の思索

登場人物たちの語りを通して浮かび上がる、歴史の曖昧さと真実の不確かさ

「アブサロム、アブサロム!」は、南北戦争以前のミシシッピ州を舞台に、トマス・サトペンという謎めいた人物の一族の興亡を描く物語です。この作品の特徴は、複数の語り手がそれぞれの視点から断片的にサトペンの歴史を語り継いでいくという構成にあります。

語り手の主観と偏見が織りなす、多層的な物語構造

語り手であるコンプソン家のクエンティンやローザ、そしてクエンティンのルームメイトであるシュリーヴは、サトペン家の真実を追い求めます。しかし、彼らの語りにはそれぞれ個人的な経験や偏見が色濃く反映されており、客観的な歴史の記述とはかけ離れたものとなっています。読者は彼らの主観的な視点を通して提示される情報をつなぎ合わせることで、サトペン家の歴史の全体像を想像していくことになります。

過去と現在が交錯する、時間軸の複雑な構成

物語は、サトペン家が築いた屋敷「サトペンズ・ハンドレッド」の崩壊と、その歴史を語る現在の人々の姿という二重構造になっています。過去と現在が複雑に交錯する時間軸の中で、読者はサトペン家の歴史が現在の人々の心に暗い影を落としていることを実感します。

人種、階級、家族の因縁が複雑に絡み合う、アメリカ南部の歴史の闇

「アブサロム、アブサロム!」は、単なる家族の物語ではなく、アメリカ南部の歴史の闇を描き出す作品でもあります。サトペン家の歴史には、人種差別、階級社会の矛盾、家族の因縁など、アメリカ南部社会が抱える根深い問題が凝縮されています。フォークナーは、サトペン家の興亡を通して、アメリカ南部の歴史の光と影を浮き彫りにしようと試みたと言えるでしょう。

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