フォークナーのアブサロム、アブサロム！の対極
ヘミングウェイの「日はまた昇る」
「アブサロム、アブサロム！」は、アメリカ南部を舞台に、複雑に入り組んだ歴史と、それが世代を超えていかに影響を及ぼすかを、時間を行き来する難解な文章で描いています。一方、「日はまた昇る」は、第一次世界大戦後の失われた世代の彷徨を描いた作品です。舞台は主にフランスのパリとスペインへと移り、簡潔で直接的な文体で、登場人物たちの喪失感や幻滅感を浮き彫りにします。
文体の対比
フォークナーの長くて複雑な文章と、ヘミングウェイの短く簡潔な文章は、両作品の最も顕著な違いと言えるでしょう。「アブサロム、アブサロム！」は、意識の流れの手法を用い、過去と現在を自由に行き来しながら、読者を物語の深淵へと引き込みます。一方、「日はまた昇る」は、客観的な視点から、登場人物たちの行動や会話を通して、彼らの内面を暗示的に描き出します。
テーマの対比
「アブサロム、アブサロム！」の主要なテーマは、過去、特に奴隷制と人種差別の歴史が、いかに現在に影を落とすかということです。 サトゥペン家を中心とした物語は、南部の歴史の暗部を象徴しています。 一方、「日はまた昇る」は、戦争によって傷ついた登場人物たちが、目的や希望を見出せないまま、空虚な日々を送る姿を描き、喪失感や幻滅感、男性性などのテーマを探求しています。