Skip to content Skip to footer

フォークナーの「響きと怒り」の思考の枠組み

## フォークナーの「響きと怒り」の思考の枠組み

###

時間の歪み

「響きと怒り」は、時間軸が入り乱れており、各章の語り手が異なる時点から物語を回想する形式をとっています。明確な時系列に沿って物語が進むのではなく、過去と現在が交錯することで、読者は登場人物たちの心理状態や、出来事の真の意味を徐々に理解していくことになります。

例えば、ベンジーの章では、彼の意識は過去と現在を行き来し、断片的な記憶が言葉の連想ゲームのように展開されます。読者は彼の混乱した内面に直接触れることで、ベンジーの置かれた状況や、彼の家族に対する愛情を理解していきます。

###

語り手の主観性

各章は、ベンジー、クェンティン、ジェイソン、そして三人称視点の計4つの視点から語られます。それぞれの語り手は独自の価値観や偏見を持っており、彼らが語る物語は客観的な事実ではなく、あくまでも主観的な解釈に過ぎません。

読者は、異なる語り手の視点を通して断片的に情報を得ることで、事件の全体像を自ら組み立てていく必要があります。この作業を通して、読者は語り手の主観性や信頼性の問題に向き合い、登場人物たちの複雑な心理を読み解くことを求められます。

###

南部の衰退と家族の崩壊

「響きと怒り」は、かつて栄華を誇ったコンプソン家の没落と、それに伴う家族の崩壊を描いています。南北戦争の敗北と奴隷制の終焉は、南部の伝統的な価値観を揺るがし、コンプソン家もまた、その影響から逃れることはできませんでした。

物語は、過去の栄光にしがみつき、現実から目を背けようとする家族の姿を通して、時代の変化と、それに伴う喪失感を描いています。読者は、コンプソン家の崩壊を通して、南部の衰退という歴史的なテーマを考察することになります。

Amazonで購入する

Leave a comment

0.0/5