フォークナーの「アブサロム、アブサロム！」と言語
特徴的な文体
フォークナーの作品、特に「アブサロム、アブサロム！」は、その独特で複雑な文体で知られています。特徴としては、以下のような点が挙げられます。
* **長文の使用:** フォークナーは、コンマやセミコロンを駆使した非常に長い文章を書くことで有名です。例えば、「アブサロム、アブサロム！」には、1ページ以上にわたる文章も存在します。これは、登場人物の意識の流れや、時間と記憶の複雑な重なり合いを表現するために用いられています。
* **複雑な構文:** 彼の文章は、入れ子構造や倒置法などを多用した複雑な構文を持つことが多く、読解には高い集中力が必要です。これは、物語の語り手たちの心理状態や、南部社会の複雑さを反映していると考えられます。
* **方言や俗語の多用:** フォークナーは、登場人物の社会的地位や人種に応じて、南部独特の方言や俗語を巧みに使い分けています。 これにより、読者は作品世界に深く入り込み、登場人物たちの生きた姿をリアルに感じ取ることができます。
* **詩的な表現:** 比喩や隠喩、反復などの修辞技法を駆使し、詩的な表現を用いることもフォークナーの特徴です。これにより、物語は単なる歴史の記録を超え、普遍的なテーマや人間の深淵に迫る文学作品へと昇華されています。
語彙
フォークナーの語彙は、作品世界を構築する上で重要な役割を果たしています。
* **豊富な語彙:** 彼は、古典的な英語から南部特有の言葉まで、幅広い語彙を駆使しています。これは、彼の作品世界を豊かに彩り、深みを与えています。
* **造語:** 既存の単語を組み合わせたり、独自の表現を作り出すこともあります。
多様な語り
「アブサロム、アブサロム！」は、複数の語り手によって物語が紡がれていくという特徴があります。それぞれの語り手は独自の視点、解釈、記憶を持っており、それが複雑に絡み合いながら、サトペンの悲劇が徐々に明らかになっていきます。
* **一人称視点:** クェンティン、ローザ、シャーリーなどの登場人物が、それぞれの視点から物語を語ります。
* **三人称視点:** 時には全知的な語り手も登場し、物語全体を俯瞰する視点を提供します。
このような多様な語りによって、読者は物語の全体像を捉えることが困難になり、謎解きのような読書体験を得ることになります。