フォイエルバハのキリスト教の本質を読んだ後に読むべき本
カール・マルクス 経済学批判序説
フォイエルバハの『キリスト教の本質』は、宗教(特にキリスト教)が人間疎外された人間の意識の産物であることを鋭く分析した著作です。フォイエルバハは、人間が自身の持つ最高の価値を神という超越的な存在に投影し、その神を崇拝することで、自らを矮小化し疎外させていると主張しました。
フォイエルバハのこの洞察は、マルクスに大きな影響を与えました。マルクスは、フォイエルバハの思想を受け継ぎつつも、宗教だけでなく、政治、経済、社会のあらゆる領域における疎外を分析しました。『経済学批判序説』は、マルクスの初期の経済学研究の成果であり、資本主義社会における労働の疎外を分析した重要な著作です。
マルクスは、資本主義社会では、労働者が自分が生産した労働の成果から疎外されていると主張します。労働者は、自分の労働力を資本家に売却することで、生活の糧を得ています。しかし、労働者が生産した商品は、資本家の所有物となり、労働者自身のものではありません。労働者は、自分の創造物である商品から疎外されているのです。
さらにマルクスは、労働の疎外が、人間関係の疎外にもつながると指摘します。資本主義社会では、人間関係は、商品交換の関係として捉えられます。人々は、お互いを利害関係に基づいて評価し、利用しようとします。その結果、人間関係は、冷淡で疎遠なものになってしまいます。
マルクスの『経済学批判序説』を読むことで、フォイエルバハの宗教批判をさらに発展させ、資本主義社会における疎外の構造を理解することができます。フォイエルバハが人間の意識の産物として宗教を分析したのに対し、マルクスは、物質的な生産様式から人間の意識が規定されると考えました。マルクスの分析は、現代社会における様々な問題を考える上でも、重要な示唆を与えてくれます。