フェルミの原子核物理学講義の原点
講義録の誕生
1949年夏、エンリコ・フェルミはシカゴ大学において原子核物理学の講義を行いました。この講義は、当時最新の研究成果を交えつつ、原子核物理学の基礎を体系的に解説したものでした。聴講した学生の一人であったアンソニー・ジノックは、フェルミの明快な講義に感銘を受け、詳細なノートを取り始めました。ジノックのノートは、他の学生の間でも評判となり、コピーが回覧されるようになりました。
フェルミによる講義ノートの確認と出版
ジノックは、学期末にフェルミ本人を訪ね、自身のノートを見せる機会を得ました。フェルミはジノックのノートの質の高さを認め、内容に若干の修正を加えた上で、出版を許可しました。こうして1950年、ジノックのノートを元に、「Nuclear Physics」と題された講義録が出版されました。
今日における「フェルミの原子核物理学講義」
「Nuclear Physics」は、その後も版を重ね、今日では「フェルミの原子核物理学講義」として世界中の物理学者に愛読されています。原著出版から70年以上が経過した現在においても、本書は原子核物理学の入門書として、また、フェルミの思考を探るための貴重な資料として、高い評価を得ています。