フィリップスの政治の論理の関連著作として
サミュエル・P・ハンチントン著「安定化のための政治秩序」
ハンチントンは本書の中で、発展途上国における政治的安定の条件を分析しています。彼は、近代化がもたらす社会的な流動性と政治制度の未発達によって、政治的不安定が生じると主張します。フィリップスの「政治の論理」と共通するのは、政治的安定には、経済成長や社会の平等だけでなく、制度的な成熟と政治的な妥協が必要であるという視点です。ハンチントンは、発展途上国における政治的秩序の構築には、強力な指導力と、社会の多様な利益を調整する能力を持つ制度が必要であると論じています。
アーレンド・レイプハルト著「民主主義の多元的統治」
レイプハルトは、民主主義の類型として、多数決原理に基づく「ウエストミンスター型」と、コンセンサス重視型の「コンセンサス民主主義」を提示しました。フィリップスの「政治の論理」は、コンセンサス重視型の政治体制における政策決定過程を分析した事例研究と位置付けることができます。レイプハルトは、コンセンサス民主主義は、社会の多様な利益を調整し、政治的安定を維持する上で効果的であると主張しました。これは、フィリップスが「政治の論理」で示した、政治的安定のためには、異なる集団間の妥協と協力が不可欠であるという主張と共通しています。
ロバート・ダール著「誰が支配するか」
ダールは、アメリカの都市における政治権力の構造を分析し、「多元主義」という概念を提示しました。彼は、単一のエリート集団が政治権力を独占するのではなく、複数の利益集団が競争し、妥協することで政策決定が行われると主張しました。これは、フィリップスの「政治の論理」が前提とする、政治過程における多元的なアクターの存在と、それらのアクター間の相互作用によって政策が形成されるという考え方に通じるものです。ダールの多元主義論は、政治権力が分散し、多様な利益が政治に反映される仕組みを重視する点で、フィリップスの研究と重要な共通点を持っています。