Skip to content Skip to footer

フィリップスの政治の論理の周辺

## フィリップスの政治の論理の周辺

###

A.W.フィリップスと「フィリップス曲線」

アルバン・ウィリアム・ハウザー・フィリップス(A.W. Phillips, 1914-1975)は、ニュージーランド生まれの経済学者です。彼は、1958年に発表した論文”The Relation between Unemployment and the Rate of Change of Money Wage Rates in the United Kingdom, 1861-1957″の中で、失業率と物価上昇率(インフレーション率)の間には、負の相関関係が存在することを統計的に示しました。この関係は、後に彼の名前を取り「フィリップス曲線」と呼ばれるようになりました。

###

「フィリップス曲線」とケインズ経済学

フィリップス曲線は、発表当時、ジョン・メイナード・ケインズの経済学を支持するものとして解釈されました。ケインズ経済学では、有効需要の不足が失業を生み出すと考えられており、政府が財政政策や金融政策によって有効需要を管理することで、失業率をコントロールできるとされていました。フィリップス曲線は、需要の増加(減少)がインフレーション(デフレーション)と失業率の低下(上昇)をもたらすという関係を示唆しており、ケインズ経済学の政策的含意を支持するように見えたのです。

###

「フィリップス曲線」への批判と「スタグフレーション」

しかし、1970年代に入ると、フィリップス曲線で示された関係は崩れ始めます。世界的にインフレーションと失業が同時に進行する「スタグフレーション」が発生するようになったのです。この現象は、フィリップス曲線では説明することができませんでした。

この批判を受け、ミルトン・フリードマンやエドマンド・フェルプスらによって、期待インフレ率を考慮したフィリップス曲線のモデル化が進められました。彼らは、短期的にはインフレーションと失業率の間にトレードオフが存在するものの、長期的には期待インフレ率が調整されるため、このトレードオフは消滅し、失業率は自然失業率の水準に収束すると主張しました。

###

「フィリップスの政治の論理」

「フィリップスの政治の論理」は、フィリップス曲線が示す経済現象を政治学的に解釈したものです。この論理は、政治家にはインフレーションと失業率のトレードオフを利用して、選挙で有利になるように経済政策を操作するインセンティブが存在すると主張します。

具体的には、選挙が近い場合には、インフレーションを許容してでも失業率を低下させる政策をとり、選挙後には、インフレーションを抑制するために失業率の上昇を許容する政策をとるとされています。

###

「フィリップスの政治の論理」への批判

「フィリップスの政治の論理」は、政治家が経済政策を政治的に利用する可能性を示唆しており、政治と経済の関係を考える上で重要な視点を提供しています。しかし、この論理は、政治家が常に合理的経済人として行動すると仮定している点や、選挙以外の政治的要因を考慮していない点など、いくつかの批判もあります。

Amazonで詳細を見る

Leave a comment

0.0/5