フィヒテの全知識学の基礎のメカニズム
フィヒテの出発点:自己意識の事実
フィヒテは、デカルトと同じく「われ思う、ゆえにわれあり」という自己意識の確実性を哲学の出発点としますが、デカルトがそこから「われ」という実体と「思う」という思惟活動を区別したのに対し、フィヒテは両者を不可分で根源的なものとして捉えます。 フィヒテにとって、意識の第一の行為は「私は私である」という自己同一の確認であり、これは同時に意識が自分自身を対象として設定する行為、すなわち自己意識の成立を意味します。
自己意識と非我の対立
しかし、自己意識が成立するためには、自己と区別される「非我」が必要となります。 つまり、「私」という意識は、それ自身とは異なる「私でないもの」を意識することによって初めて成立するのです。 フィヒテは、自己意識と非我を「自我」と「非自我」と呼び、この両者の関係こそが知識の根本原理であると考えました。
制限作用と三つの原理
フィヒテは、自我と非自我の関係性を「制限作用」として説明します。自我は無限の活動力を持つものですが、非自我からの抵抗を受けることで、自己の限界を意識し、有限な存在として成立します。 この制限作用は、以下の三つの原理に基づいて展開されます。
* **同一性の原理:** 自我は自我である。
* **非矛盾の原理:** 自我は非自我ではない。
* **根拠の原理:** 非自我は自我によって制限されなければならない。
これらの原理は、論理的に導かれたものではなく、自己意識の分析から帰納的に得られたものです。 フィヒテは、これらの原理を通して、自我が非自我を制限し、自己を規定していく過程を段階的に示そうとしました。
知識の成立:自我と非自我の相互作用
フィヒテによれば、知識とは、自我が非自我を制限し、自己を規定していく過程そのものです。自我は非自我に対して能動的に働きかけ、それを概念によって把握しようとします。 しかし、非自我は完全に把握されることはなく、常に自我に抵抗し続けます。 この自我と非自我の相互作用こそが、知識の進歩の原動力となります。
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