フィッツジェラルドのグレート・ギャツビーの原点
1. フィッツジェラルド自身の経験
「グレート・ギャツビー」は、フィッツジェラルド自身の経験や観察を色濃く反映した作品です。彼自身、中西部のセントポール出身で、裕福な東部の社交界に憧れを抱いていました。しかし、生まれ育った環境の違いから、上流階級の人々とはどこか馴染めない疎外感を感じていました。
小説の主人公ジェイ・ギャツビーは、まさにフィッツジェラルドの分身ともいえる存在です。成り上がり者であるギャツビーが、富と名声を得ても満たされない心の空白を抱えている姿は、当時のフィッツジェラルド自身の苦悩と重なります。
また、フィッツジェラルドは、社交界の花形として華やかな生活を送る一方で、アルコール依存症に苦しみ、妻ゼルダとの関係も不安定でした。こうしたフィッツジェラルド自身の経験が、華やかさの裏に潜む虚無感や、破滅へと向かっていく登場人物たちの姿に投影されています。
2. ジャズ・エイジの世相
「グレート・ギャツビー」は、1920年代のアメリカを舞台としています。第一次世界大戦後の好景気の中で、人々は享楽的な生活に耽り、資本主義が隆盛を極めていました。しかし、その一方で、道徳観の退廃や貧富の格差の拡大など、社会にはさまざまな矛盾や歪みが生じていました。
小説では、ギャツビーの豪邸で行われる毎晩の豪華なパーティーや、登場人物たちの浪費的な生活など、ジャズ・エイジの狂騒と退廃が鮮やかに描かれています。しかし、その一方で、トム・ブキャナンやデイジーといった上流階級の人々の冷酷さや、ギャツビーの悲劇的な運命を通して、物質的な豊かさだけでは真の幸福は得られないという、当時のアメリカの暗部も浮き彫りにされています。