## ピンカーの暴力の人類史に関連する歴史上の事件
### 狩猟採集社会における暴力
ピンカーは、歴史的に見て、狩猟採集社会は一般に信じられているほど平和ではなかったと主張します。彼は、考古学的データや、現代に残る狩猟採集民の民族誌的研究を証拠に挙げ、これらの社会では、部族間抗争や個人間の暴力による死亡率が非常に高かったことを示唆しています。
### 国家の形成と暴力の減少
ピンカーは、国家の形成が暴力の減少に大きく貢献したと論じています。国家は、法の執行と司法制度を通じて、個人間の暴力や部族間抗争を抑制する力を持ちます。また、国家は、広範囲な交易ネットワークを保護し、資源をめぐる争いを減らす効果ももたらします。
### 中世ヨーロッパにおける暴力
ピンカーは、中世ヨーロッパは、一般的に考えられているほど暴力的ではなかったと主張します。彼は、当時の殺人事件の記録を分析し、中世後期の殺人率は、それ以前の時代よりも低下していたことを示しています。ただし、中世ヨーロッパでは、宗教戦争や農民反乱など、大規模な暴力事件が発生したことも事実です。
### 近代における暴力の減少
ピンカーは、17世紀以降、ヨーロッパを中心に、戦争、殺人、拷問、残虐行為などのあらゆる形態の暴力行為が劇的に減少したと主張します。「理性の時代」「商業革命」「人道革命」といった要因が、暴力の減少に寄与したと考えられます。
### 20世紀の戦争とジェノサイド
20世紀には、二度の世界大戦やナチスによるホロコーストなど、人類史上未曾有の規模の暴力事件が発生しました。ピンカーは、これらの出来事を「歴史の異常」と位置づけ、長期的には暴力は減少傾向にあるという主張を維持しています。
### 冷戦と核兵器
冷戦時代には、アメリカとソ連の対立により、核戦争の危機が現実のものとなりました。しかし、ピンカーは、冷戦は「長い平和」の時代でもあったと指摘します。超大国間の恐怖の均衡が、全面戦争の勃発を抑止したと考えられます。
### グローバリゼーションと暴力の減少
ピンカーは、グローバリゼーションが暴力の減少に貢献する要因の一つであると主張します。国際的な貿易や投資の拡大は、国家間の相互依存を深め、戦争のコストを増大させます。また、文化交流の促進は、異文化理解を深め、偏見や差別を減少させる効果も期待できます。