ピレンヌのベルギー史を読んだ後に読むべき本
近代ベルギーの歴史を知るための導き手
アンリ・ピレンヌの『ベルギー史』は、古代から第一次世界大戦までを網羅した、ベルギー史研究の金字塔と言えるでしょう。しかしながら、100年以上前に書かれた本書は、当然ながらその後の歴史的展開や新たな研究成果を反映していません。そこで、ピレンヌの著作を読破した後に、より深く現代ベルギーを理解するために最適な一冊として、ランボー氏の『ベルギー現代史』を挙げたいと思います。
現代ベルギーの歩みを辿る
ランボー氏の著書は、ピレンヌがその筆を置いた第一次世界大戦後のベルギーを起点とし、現代に至るまでの複雑な歴史を紐解いていきます。二つの世界大戦に翻弄されながらも、独立国家として歩みを進めるベルギーの姿は、ピレンヌの描いた歴史の延長線上にありながらも、異なる様相を見せてくれます。
多様性の中の統一、統一の中の多様性
特に注目すべきは、フランデレン地域とワロン地域の対立、そしてその融和への努力でしょう。言語や文化、経済構造の違いから生じる両地域の溝は、ベルギーという国家を常に揺さぶり続けてきました。ランボー氏は、政治、経済、社会、文化といった多角的な視点から、現代ベルギーが抱えるこの根源的な課題を浮き彫りにしています。
ヨーロッパ統合の中でのベルギー
さらに、本書はベルギーが一国家を超え、ヨーロッパ統合という大きな流れの中でどのように自らを位置付けてきたのかを明らかにしています。EUの本部が置かれ、「ヨーロッパの首都」とも呼ばれるブリュッセルを抱えるベルギーは、ヨーロッパ統合の進展と常に密接に関わりながら、独自の道を模索してきました。ランボー氏は、その歩みを冷静な筆致で描き出しています。
過去を理解し、未来への視座を得る
ピレンヌの著作でベルギー史の基礎を築いた読者にとって、ランボー氏の『ベルギー現代史』は、現代ベルギーを理解するための羅針盤となるでしょう。そして、それは同時に、ヨーロッパ全体の過去と現在、そして未来を考える上でも重要な視座を与えてくれるはずです。