ピレンヌのベルギー史を読む前に
ピレンヌの生涯と業績について
アンリ・ピレンヌ（1862-1935）は、ベルギーを代表する歴史家の一人です。彼の代表作『ベルギー史』は、7世紀のイスラム教徒の進出をヨーロッパ史の転換点と捉え、従来のゲルマン民族移動説に異議を唱えるなど、歴史学に大きな影響を与えました。
ピレンヌは、史料批判に基づいた実証主義的な歴史研究を重視しました。彼は膨大な史料を渉猟し、綿密な分析によって歴史的事実を明らかにしようとしました。また、経済活動や社会構造といった物質的な側面から歴史を捉えることに力を入れたことも特徴です。
彼の歴史観は、当時のヨーロッパ中心主義的な歴史観とは一線を画していました。彼はヨーロッパだけでなく、イスラム世界も含めた広い視野から歴史を捉えようとしたのです。
『ベルギー史』の内容と特徴
『ベルギー史』は、古代から20世紀初頭までのベルギーの歴史を網羅的に描いた monumental な作品です。ピレンヌは、ベルギーという国家が成立するまでの長い歴史を、政治、経済、社会、文化など様々な側面から描き出しています。
本書の特徴として、以下の点が挙げられます。
* **史料批判に基づいた実証的な歴史叙述**
* **経済活動や社会構造といった物質的な側面からの歴史分析**
* **ヨーロッパとイスラム世界との関係に着目した広い視野**
特に、ピレンヌは、フランク王国時代においてもローマ時代の経済構造や文化が継続していたことを指摘し、イスラム教徒の進出によって地中海交易が断絶されたことが、西ヨーロッパ世界を大きく変容させたと主張しました。
『ベルギー史』を読むための予備知識
『ベルギー史』は、専門的な内容を含むため、ある程度の予備知識を持っていた方が理解が深まります。
* **ヨーロッパ史の基礎知識**：特に、古代ローマ史、フランク王国史、中世ヨーロッパ史に関する知識があると理解しやすいでしょう。
* **イスラム史の基礎知識**：イスラム教の Entstehung やウマイヤ朝、アッバース朝といったイスラム帝国に関する知識があると、ピレンヌの主張がより理解しやすくなります。
* **歴史用語**: ピレンヌは専門用語を多く用いるため、事前に用語の意味を調べておくことが重要です。
『ベルギー史』を読む際の注意点
* **出版年が古い**: 『ベルギー史』は20世紀初頭に書かれた本であるため、最新の研究成果が反映されていない部分もあります。
* **ピレンヌの主張に対する批判**: ピレンヌの主張は、その後の研究によって修正を迫られている部分もあります。