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ピレンヌのベルギー史の構成

ピレンヌのベルギー史の構成

1. 序論: ベルギー国家の独自性の起源について

ピレンヌは本書の冒頭で、ベルギーという国家の独自性の起源について考察しています。彼は、伝統的な歴史観に見られるような、中世以来の政治的な統一性を根拠とするベルギー国家像を否定します。その代わりに、彼は地理的・経済的な要因に着目し、古代ローマ時代からの長い歴史の中で培われてきた「ベルギー的特質」の存在を主張します。

2. ローマ化とゲルマン化の時代: フランク王国におけるベルギー

ピレンヌは、ローマ帝国によるガリア征服と、その後のゲルマン民族の侵入という大きな歴史的転換期におけるベルギーの変遷を詳細に描きます。彼は、ローマ帝国の支配下でベルギーが経済的・文化的に繁栄を享受し、ローマ文明の影響を強く受けたことを指摘します。また、ゲルマン民族の侵入後も、フランク王国の一部として、独自の文化と言語を保持し続けたことを強調します。

3. 中世のベルギー: 分裂と都市の繁栄

ピレンヌは、中世に入ると、ベルギーがフランク王国の分裂によって複数の領邦に分裂していく過程を記述します。彼は、この政治的な分裂にもかかわらず、経済活動の中心地として都市が発展し、独自の都市文化を形成していく様子を活写します。特に、フランドル地方の毛織物工業の発展と、それに伴う都市の繁栄は、後のベルギー経済の基盤を築く上で重要な役割を果たしました。

4. ブルゴーニュ時代とハプスブルク家支配: 統一と対外進出

ピレンヌは、14世紀後半からのブルゴーニュ公国によるベルギー諸地方の統合と、その後のハプスブルク家による支配について解説します。彼は、ブルゴーニュ公国が強力な中央集権体制を築き、ベルギーを政治的に統一したことを評価します。また、ハプスブルク家支配の下で、ベルギーがヨーロッパ政治の舞台で重要な役割を果たし、海外進出にも積極的に取り組んだことを指摘します。

5. 宗教改革とネーデルラント独立戦争: 分裂と再編

ピレンヌは、16世紀の宗教改革がベルギー社会に大きな影響を与え、ネーデルラント北部との分裂をもたらしたことを記述します。彼は、宗教改革が政治的な対立と結びつき、ネーデルラント独立戦争へと発展していく過程を詳細に分析します。そして、独立戦争の結果、ネーデルラント南部がスペインの支配下に留まり、後のベルギー国家形成の基礎となったことを指摘します。

6. 近代のベルギー: 独立と国家形成

ピレンヌは、1830年のベルギー独立革命と、その後のベルギー国家の形成過程を記述します。彼は、ベルギー独立が、ヨーロッパ列強の勢力均衡と、ベルギー国民の民族意識の高まりによって実現したことを指摘します。また、独立後のベルギーが、立憲君主制を採用し、産業革命の波に乗り遅れることなく、経済発展を遂げていく様子を描き出します。

ピレンヌは、ベルギー史を政治的な出来事の羅列としてではなく、地理的・経済的な要因を重視しながら、長期的な視点から捉え直すことを試みました。彼の歴史観は、その後のベルギー史研究に大きな影響を与え、現代においても重要な視点を提供しています。

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