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ピレンヌのベルギー史の周辺

ピレンヌのベルギー史の周辺

1. アンリ・ピレンヌと彼の時代

アンリ・ピレンヌ(1862-1935)は、ベルギーを代表する歴史家の一人です。リエージュ大学で歴史学を修めた後、同大学教授となり、中世都市史、経済史、ベルギー史などを研究しました。ピレンヌは、歴史研究においては一次史料の批判的な分析が不可欠であると主張し、自らも膨大な史料を渉猟して、従来の通説を覆すような画期的な研究成果を発表しました。

2. 『ベルギー史』の内容と特徴

ピレンヌの主著『ベルギー史』(Histoire de Belgique, 全7巻, 1899-1932)は、先史時代から第一次世界大戦までを扱った通史です。本書は、政治史だけでなく、経済史、社会史、文化史などにも幅広く目を向け、ベルギーという国家の形成と発展を総合的に描き出した monumental な著作として高く評価されています。

特徴的なのは、従来の政治史中心のベルギー史とは異なり、経済的要因や社会構造の変化を重視した点にあります。ピレンヌは、中世における都市の発展や商業活動に着目し、フランドル地方を中心に経済的に繁栄した地域が、政治的な独立を求めて徐々にまとまっていった過程を明らかにしました。また、宗教改革やネーデルラント独立戦争など、従来は政治的・宗教的な対立として捉えられてきた出来事についても、その背後にある経済的な要因を分析し、新たな解釈を提示しました。

3. 『ベルギー史』への評価と影響

『ベルギー史』は、刊行当時から学界から高い評価を受け、その後もベルギー史研究の standard な著作として、多くの歴史家に影響を与えました。ピレンヌの提唱した歴史観や方法論は、 Annales 学派をはじめとする20世紀の歴史学に大きな影響を与え、政治史中心の歴史叙述から、社会経済史を取り入れたより包括的な歴史叙述への転換を促しました。

4. 『ベルギー史』の限界と批判

しかし、『ベルギー史』は、その後の研究の進展や新たな史料の発見などによって、いくつかの点で批判を受けるようにもなりました。例えば、ピレンヌは、中世におけるイスラム教の影響を過小評価しているという指摘があります。また、ベルギーという国家の形成を、経済的な要因を中心とした「必然」として描いた点についても、近年では政治的な要因や人々の意識といった側面を軽視しているという批判があります。

5. 結び

以上のように、『ベルギー史』は、ピレンヌの学問的業績の集大成ともいえる monumental な著作であり、その後のベルギー史研究に計り知れない影響を与えました。出版から100年以上経った現在でも、その功績は高く評価されています。

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